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2011年9月30日 (金)

虎とバター

バターが全く入手できなくなりました。

いつも購入しているネットショップにも、たまに購入している近所の業務用食材店にも在庫がありません。

来週末に行われる「わののわ」で菓子を販売させていただくにあたり、手持ちのバターの在庫がさみしくなったため、いつものネットショップに発注しようとしたら在庫がゼロとのこと。
バターが品薄になるということは8月上旬からメディアで騒がれていたので知ってはいました。(東日本大震災の影響による原乳の廃棄と、去年の猛暑の影響で乳牛の種付けがうまくいかなかったことが原因で、生産量が減少していると報じられています。)
でも、先々週までは一人5個までの個数制限はありましたが、なんとか購入できていたので、大量の買い置きをしないままでした。

わたしが専門に学んで作ってきた「フランス菓子、ベルギー菓子」はバターが無いと90%のお菓子が作れません。

さあどうしよう。
昨日1日途方にくれました。

しかし、バターが品薄になったのは今回が初めてではないのです。
2007年にも生乳減産調整の影響や輸入飼料価格の高騰による影響でからバターが品薄になりました。
当時東京のベルギー料理店でデザート担当として勤務しており、いつバターが無くなるか冷や冷やしながらお菓子を作っていたことを昨日のことのように覚えています。

ちょうどこの年は石油の値段が異常に高騰し、漁業を営む人たちが、船を出しても燃料代の方が高くついてしまう恐れがあるため、漁業に出られないかもしれないという状況になり、日本近郊の魚介類が一切入手できなくなるのではないかとも言われていました。

お米の減反や生乳の減産調整は以前からずっと疑問を抱いていた政策でした。
ただでさえ自給率の低い日本で、需要が少ないからといって農畜産物を減産していくことが賢明な策とはとても思えなかったのです。
国内の生産者を守ることをしない、大事にしない、この国の食糧事情に幻滅を覚えるばかりでした。

わたしたち製菓業界では、ほとんどの店で同じようなメーカーの輸入冷凍フルーツピュレを使用して菓子を作ります。
国内産のフルーツはブランド品のような扱いで、非常に高価なため使用できるお店は一部の有名店になってしまいます。

なにかがおかしい。
そうずっと感じていました。

わたしたちの周りには、日常口にする果物も野菜も乳製品も国内で生産されたものがたくさんあるのに。
たまに帰省する仙台では宮城県内で採れた果物が驚くほど安く購入できるのに。

こんなに豊富な食材があるのだから、輸入物を使う必要はないのではないか?
日本の果物はフランスの果物に比べて味が薄いと評されることが多いですが、では日本の果物にあった調理法をすればよいだけなのでは?むしろ料理人の腕の見せどころでは?
フランスで食べるフランス菓子がおいしいのは、地域に根差した食材を季節ごとにうまく使っているからではないのか?

などの疑問が噴出して止まらなくなりました。

家族の事情もありましたが、わたしが仙台で菓子店を開業したいと思った理由はこのあたりの事情も大きく関わっていたのです。

去年は10キロ以上の県内産イチジクを購入し、色々なお菓子を作ったり、ドライフルーツにしたり、洋酒につけたり、ジャムにしたりしました。

今年は原発事故の影響からわたしは県内産の農作物を使用することは見送っています。
「暫定基準値」という言葉を使用しているうちはどうしても、完全に信用することができないのです。
先日宮城県のお米の安全宣言が発表されました。
しかし、一方では福島第一原発からおよそ60キロ離れている二本松市のお米から基準を大きく超す放射性セシウムが検出されています。

まだ原発事故から半年しか過ぎていないことからも、どこで何が起こってもおかしくないという危機感を持ち続けなければならない段階だと思うのです。
しかし、現在国内で生産され流通される食糧は最悪の事態を予測するのではなく、希望的観測で様々なことを判断しているとしか言いようがありません。

減反や減産調整に加え、放射性物質汚染問題も含めると、この国の食糧政策の全てが、政争や目先の金勘定(経済活動ともいえない)に支配されているように感じます。

「風評被害に躍らせれている」「基準値は超えていない」などの言葉のもとで、わたしがどのような気持ちで地元の食材を使えないでいるかということは、抹殺されるだけなのでしょう。

浜通りの食材も宮城の食材も使えなくなった私は、しばらくどうしていいかわからなかったのです。
そこからどんな思いで這い上がってきたか…。

バターが入手できなくなったことによって、頭の中が木の周りをぐるぐる回ってバターになった虎のように、ドロドロになって行くようでした。

そして、もう一度固まった頭でようく考え、ある一つの結論に達しました。

本日は怒りのあまり長文になってしまったので、明日お知らせいたします。

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